小さい時から『ごちそう』って何だろう?と思ってきた。
お腹が空くと、ごちそうの絵を描いてみた。骨付き肉やスープ、何段もあるデコレーションケーキ、プリンアラモード、山盛りのフルーツ…。
わたしが描くごちそうは、(誰かの)結婚式に連れて行かれた時のフルコース料理(その時メロンを初めて食べた!)や、マンガや本の描写から。子どもゆえにごちそうのイメージが乏しいのだった。
きっと、お金持ちや芸能人がいつも食べているのが『ごちそう』なんだろうな…!って思っていた。
大阪で通った小学1年生の1学期だけは給食を経験した。給食で生まれて初めて“ポテトチップ”を食べた。「これ美味しい…!」と思った事が忘れられない。兄者が「ポテトチップ!ポテトチップ!」と嬉し気に言っていたから余計に記憶に残っているのだ。(カルビーのポテトチップスが販売される4~5年前の話よ。)
一方、引っ越した田舎の小学校はお弁当持参だった。
学校に近い家の子は、お昼休みに帰って食べても良しとされていた。わたしも徒歩5分だったので、お家でお昼のワイドショーなんか見つつ、メザシの焼いたのとか?焼き飯とか?簡単なご飯を食べていたと思う。それにしてもお昼休みに家に帰るだなんて…。今思うと緊張感の無い田舎の小学校生活だったなぁ。
同級生はわたし含めて8人(男5人女3人)。大阪のマンモス校と打って変わって…こじんまり。
小学校低学年の、そんなある日の事。同級生のじゅん子ちゃんが、「きょうのお弁当はごちそう」と言うのだ。誰に言うでもなし…つぶやくように。じゅん子ちゃんは鼻をツンとさせて自慢げな顔をしていた。
わたしは「ええ?どんなの?」とあえて聞かなかった(聞けなかった?)。なんとなく…お弁当って、家庭のプライバシーというかセンシティブな事だと…子どもながらに感じていたのだ。時代的に質素なおかずだったし…(地味でもお弁当は美味しい不思議。)
ただ、その自慢げな顔のお弁当の中身が気になる…!「ごちそう」って何だろう!!!
…たぶんその日はわたしもお弁当だったに違いない。母の気まぐれやお出かけで、お弁当の日もちょいちょいあったから。
いよいよお昼だ。じゅん子ちゃんのお弁当…ワクワクドキドキ。わたしも目が離せない。じゅん子ちゃんがお弁当ハンカチを広げると、いつものアルマイトの小さなお弁当箱だった。淳子ちゃんが顔を紅潮させて蓋を開ける…おおお。
…中身は海苔巻きや玉子で巻いた太巻き、ピンクの寒天やらがぎゅうぎゅうぎゅう、と詰められていた。
ああ、なんだ昨日の残り物か…と察知した。田舎では何かしらの集い(冠婚葬祭)があると“皿鉢(さわち)料理”が出される。それの残り物だった。
オードブル的な。⤵ (これは2年前の田舎の法事の時の。)

別皿で、カツオのたたきやお刺身の盛り合わせの皿鉢料理もある。
パッと見ると華やか。だけれど、よくよく見ると子どもが好むモノが少ない…。わたしはいつも中央に鎮座している鯖寿司が苦手だったし、巻き寿司もそんなに好きでなかった。今も昔も子どもは唐揚げ、えびフライ、ミートボール、ウインナーとか…洋風でジャンクなモノが好きよね…。
だから(たぶん固くなった)巻き寿司を詰めたお弁当は…わたしだったら嫌だな、と思った。
でもじゅん子ちゃんにとっては“ごちそう”。それは、わたしにとって小さなカルチャーショックだった。田舎ではそうなんだ……と。
今思うと、じゅん子ちゃんは甘えたわたしと違って、巻き寿司やら料理を作る側の大人の目線だったのかもしれない。ごちそうを作る手伝いをしたのかもしれなかった、きっと。
小学校高学年~中学になると家庭科(料理や裁縫)の授業がある。じゅん子ちゃんは包丁使いも針にも慣れていた。なんだか疲れた主婦のように…黙々とこなすのだ。横にいると𠮟られそうな感じ。じゅん子ちゃんは小柄な子どもなのに、どこか大人の苦労を背負っているように見えた。
4人兄弟の長女で(お父さんがいなくて)家のお手伝いもよくしているようだった。遠足のお弁当は自分で(兄弟の分も)作っていたみたい。メインのカラフルなお弁当の他にサンドイッチなんかも作っていて…たぶん自分で作るんだから好きなように作っている感じ。「小学生なのにすごい!いいなあ…それ、ごちそうじゃん!」って思ったっけ。
じゅん子ちゃんと仲良くしたのは小学校の時だけで、中学になると疎遠になった。その後、看護学校に行って、風のうわさでは早くに結婚して家庭を持ったみたい。働き者のお母さんになったのだろうな。
そんなじゅん子ちゃんは、50歳くらいで早くに亡くなった。癌で。
今でもわたしは「ごちそうって何だろう…」って考える時がある。
『ご馳走』だから、作る人が一生懸命に用意した料理かな。高級食材や、身体に良い食材を使った料理かな。食べる人が「わあっ♡」と感嘆する見栄えのする料理かな。
『ごちそう』を考える時、いつもじゅん子ちゃんを思い出す。
浜省が、ライブ前に食べる食事を写真に撮っていて会報に載せていた。それは、ホテルで用意された玄米おにぎり、魚…とかが並んだ懐石弁当風。健康的なものを用意してもらっているとの事。さすが。
子どもの頃はお金持ちや芸能人は、さぞかしごちそうを食べているんだろうな…と安直に思っていたけど。…思ったのと違う、これはこれで『ごちそう』にほかならない。


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