みのちゃんが夜勤でいない夜、みのベッドでももちゃんと眠ることにした。
「U‐NEXT」で映画「川っぺりムコリッタ」を観ながら。1年前に上映された映画。
前科者の青年(松山ケンイチ)が、ひっそりと暮らすために訪れた地。イカの塩辛工場で働き、川っぺりにあるハイツ「ムコリッタ」という安アパートで生活することになった…お話。
青年は、誰とも関わりたくない。なのにムコリッタの住人(ムロツヨシ、吉岡秀隆、満島ひかり、ら)と、なんだかんだ交流を持つことになる。
住人らもまた、過去の何かしらを背負っていて…社会からややはみ出し気味ではあるものの、明るく貧しく暮らしているのだった。
イカをさばく単純な仕事をまじめに黙々と続ける青年は、もう何日もろくに食べていない。わずかなお給料をもらって、それでもやっと!お米やらを買うことができた。
気持ちは急くが…彼はその米をていねいに研ぐ。きっちり水加減をして、炊きあがるのをしゃもじを持って待つ。そして炊き立てのご飯の匂いを嗅いでから、ゆっくりほぐす…。
白飯にネギの味噌汁、おかずは海苔の佃煮と工場の社長にもらったイカの塩辛。
空腹の青年は白飯を1口ほおばって深く鼻呼吸をし、生き返った。
もうこのシーンだけで、わたしは炊き立てご飯が食べたくなった(毎日炊いているというのに)。
「かもめ食堂」の監督、荻上直子の作品。ということはもちろん、フードスタイリストは飯島奈美さんだ。今回は地味な食事だかりだけれど、それでもおいしそうなのはさすが。
一方で、イカの塩辛工場のどろんどろんした大量のイカ、イカの塩辛によく似たナメクジ、孤独死の後のウジ虫、などの描写もある。火葬された身内の骨も…。
汗だくのムロツヨシも暑苦しくてイヤだ。隣人の「ミニマリスト」と称する彼は「お風呂入らせて?」と青年の部屋に入り込み、自家製の夏野菜を分けてくれるをいいことに、炊き立てご飯を「おいしいね」と一緒に食べる。
「ムコリッタ(牟呼栗多)」とは、仏教における時間の単位のひとつで「48分」なのだそう。最も短い単位は刹那という。なるほど。
「ムコリッタ」=「ささやかな幸せ」を、この映画では意味する。日々の幸せのお話なのだ。
生きていくには「死」が近くにあるし、生まれた時から人生は修行。だからこそ、小さな幸せを拾い集めながら毎日を生きていくのだ。…という基本を観るような映画だった。「ああっ」と、気持ちがリセットされるというか。そしてなぜか…生きるエネルギーをもらえる。
また、わたし的には「ムコリッタ」に住む謎の父子の吉岡秀隆が、なんだかツボだった。先日NHKの「ファミリーヒストリー」の吉岡秀隆の回を観てから、妙に気になる存在。

寅さんの満男、北の国からの純、コトー先生、それから金田一耕助か。べそをかいた腫れぼったい目。はにかんだ笑顔。線の細い身体…。弱さの中にきっとある…強さ。
「役者を辞めたい、辞めたい思いながらここまで来た」らしいが、高倉健や、渥美清、名立たる俳優や監督に囲まれて育ち、またご両親も素敵…とあらば、その人間性が興味深い。
当たり障りのない善人より、どこかユニークな人に惹きつけられる。
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