ここは、夜の某森林公園…。
時刻は、夜の8時。
車から降りたみのちゃんとももちゃんとわたしの3人は、公園の広場を歩いている。
遠くに街灯がちらりと見えるが、わたし達は半月のうっすらとした明かりだけで歩いている。
昼間に何度も来たことがあるので、どの辺りを歩いているかは、なんとなく見当がつくものの…。
踏みしめているのはシロツメクサの花…暗闇の中では花の匂いが強く感じるのだなあ。
この時刻…やはり人は誰もいない。
「こっち、こっち」とみのちゃんに連れて行かれる。
みのちゃんとももちゃんの姿は、近くだとぼんやりシルエットでわかるが、離れると闇の中に見えなくなってしまう。
「待って~、待って~」と置いて行かれないようについていく。
「…もういいんじゃない?」泣き言をいうわたし。
「もうちょっと、こっち、こっち!」とみのちゃん。
ももちゃんの足取りも軽く、暗闇の散歩をひょうひょうと楽しんでいる。
何なんだ、この二人は…。
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広場から右手の森に入るつもりらしい。
嫌だ、怖い。
みのちゃんがスマホのライトで足元を照らしてくれ、ゆるやかな山道の階段をどんどん上っていく。
みのちゃんの腕にしがみついて歩く。
森の中は月明りも届かない、真っ暗闇の不気味さ。
ムン…と緑色の匂いばかりがまとわりつく。
途中、大木にライトを照らして「あ、この木が目印!」なんて言ってたけど、ほんとかな…。
そこからもずいぶん上りましたよ…。
わたしはもしかして「おばすて山」のように、捨てられに来たのでは…とさえ思った。
「あっ!ここ!ここや!」
何やら水が溜まった沼のような…池?
なんと!そこには無数の蛍が!
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そう、わたし達は蛍を見にきたのだ。
昨年、この近くでももちゃんとふたり暮らししていた時に、蛍の生息している「とっておきの場所」を見つけたみのちゃんが、「見たい」と言うわたしを連れて来てくれたというわけ。
蛍はみな、水際の草場にとまってポウ、ポウと静かに光を放っていた。
池の全容は見えないが、浅いひょうたん池のようになっているらしい。
蛍の光を眺めている間は恐怖感もなくなって、この景色を目に焼き付けた。
帰り道はスムーズだったが、途中何度も怖い目にあった。
ももちゃんが草むらの色々な物にいちいち反応するんだもの!
大興奮よ。
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ミヤマクワガタ?!
サナギから出たばかりなのかしら、頭に土がへばり付いていたので、取ってやろうとしたけど上手く取れなかった。
みのちゃんが「なんで触れるん!気持ち悪い!」言ってたけど、「なんぼで売れるん!」とも言ってた。
ももちゃんはヘビも見つけて追いかけて大興奮。
興奮が冷めやらなくて、わたしの足やみのちゃんにまで嚙みついてくる始末。
「ガルルルル、ガルルルル」と、くるくる回っている。
楽しすぎるとこうなるらしい。
2度と…こんなところに夜の散歩に来ることはないわ。
でも、「蛍のライブショー」を見ることができたのは子どもの時以来だから。
一生の思い出ね。
(これはきのうの夜のお話。)
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