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溝に落ちたチャオの話

猫のこと・犬のこと

 きのう、最後のリハビリだった。

病院の途中にある公園の桜が、1週間前は固いつぼみだったのに「あらまあ!」と驚くほど咲いていた。2~3分咲きというところか。

その公園近くで、7年前くらいに排水溝に落ちて登れなくなった仔猫を救助したのだが、その猫に久しぶりに出会った。前にも見かけたので3度目かな。…いなばキャットフードのCМの長毛種の猫によく似ていたから「チャオ」と名付けている。

7年前…。仔猫が誤って落ちたであろうコンクリートの排水溝は2メートル以上の深さがあった。自力で登ることが出来ず…ニャーニャーと助けを求めていたのだ。6ヶ月くらいだろうか、成猫より一回りほど小さい。

仔猫は溝の底から空を見上げて泣き続けた。毎日毎日…。通る人はそれに気づいても、見下ろして「猫がいるー」と言うだけ。わたしは、通勤の道なので「何とか自力で這い上がってくれ」と願っていたのだが…毎日毎日通る度、泣いている…困った。

仔猫自身も登れるところを探して溝をウロウロ移動していたが、ほとんど車道下のトンネルになっていて、見えるところはどこまでも深さが続くハードな溝である。

とうとう最初の発見から7日目くらいに、わたしは居ても立っても居られない気持ちになった。仔猫の鳴き声でノイローゼになりそうだし、これから雨が降るというからだ。大雨が降るとこの溝は、一気に雨水を集めてゴウゴウと恐ろしい流れとなる。コンクリートの壁には逃げ場はない。

パートの仕事が終わった午後、みのちゃんに相談して救助を決行した。何はともあれカリカリとキャリーを持参した。

…と言っても、深い溝に降りることができたのは身軽なみのちゃんと、ダイソー駐車場の誘導員のお兄さんくらいで、逃げ回る野良猫を捕まえることは不可能だった。わたしは高い所からカリカリを投げ落とすことしかできない。仔猫は拾って食べた。少しだけ。

近くのコンビニの店員さんが大きな段ボールを用意してくれたり、みのちゃんの職場の人が網を持ってきてくれたりと協力してくれたが、大きな溝なので無理だった。その間、野次馬もたくさん来た。人がたくさん集まっても頼りになる人はいなかったし、捕獲作戦を考えても術がなかった。

結局、夕方みのちゃんが消防に電話をしたのだった。野良猫は助けられないというのでわたしの猫になった。その時急きょ「チャオ」になったのだ。

消防車で現れた消防士さんの仕事は早かった。体格の良い隊員6~7人がゾロゾロゾロッと溝に入って3メートル間隔で配置された。そしてそれぞれ足を開いて待ち構えて、あっという間に隊長が持っているトランシーバーから「確保」という音声が流れてきた。15分くらいの出来事だったように思う。

網に入った「チャオ」はキュッと縮こまって一握りの大きさしかなかった。長毛種なのでふわふわして大きく見えたけれど…こんなに小さかったのだ。そしてわたしが持っているキャリーに入れられた。手をひっかかれた隊員もいて、本当に感謝の気持ちで「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度もお礼を言った。

わたしは消防の隊長からひと通り注意を受け、野次馬から「よかったねー」とねぎらいを受けたが、正直それらに対してはどうでもいい気持ち…悪いけど。溝の仔猫が地上に上がれさえすれば、それで良かったから。

家に連れ帰ったチャオに「病院行くか?うちの子になるか?」と聞いたら、答えは「NO」だった。キャリーの中でバンバン暴れるチャオに、たらふくごはんを食べさせた。その後、元居たであろう場所にそっと返した。…もうすっかり夜になっていて、雨が降っていた。

わたしは良い行いをしたかもしれないけれど、悪い行いをしたかもしれなかった。今でも思い出していろいろと考える。

「チャオ」はこの公園周辺で暮らしている。エサをこっそり与える人もいるのだろう、こうして長く生きている。仲間もいるようだ。

久しぶりにチャオに会えてうれしい気持ちになった。救助して良かったと思えた。

「チャオ」と声をかけると、険しい顔でこっちを見ていたけれど。⤵

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