エイコさん(わたしの亡き母)の嫁ぎ先の山に、りっぱなゆずの木があったそうな。
エイコさんは姉のアッコさんに、「いいゆずだから。」と、ゆずの種を分けてあげた。
アッコさんもまた、嫁ぎ先の畑に、無造作にその種を蒔いた。
ふたりはその後、それぞれ田舎を離れ、都会に出て暮らした。
ふたりが都会に出て、10年、20年、30年、40年、50年…年月は流れた。
ゆずは、立派に成長し、毎年実をつけたにちがいない。そのゆずの木の年齢は私より3つほど年上のはず。
アッコさんは、今はその田舎の家に帰って、老後の暮らしをしている。
毎年、何かしらの贈り物に、庭のゆずを2~3個添えて送ってくれた。
1度、ゆずの当たり年だったからと言って、ダンボールいっぱい送ってくれたことがあった。
わたしは、ゆずジャムをいっぱい作り、いちごのジャムも一緒に、お返しとして送ったら、とても喜んでくれた。
「このゆずは、エイコさんのゆずよ。」
「えっ、そうなの?」
と、この時聞いた、アッコさんとエイコさんのゆずのお話。
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