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連行されるふたり

おでかけ

 ももちゃんは散歩は好きなのだけど、出かける準備の時は「いやだいやだ」と家の中を逃げ回る。

捕まえて首輪をすると観念して、連れて行かれるという茶番劇を毎回繰り返している。

そういうわたしも、みのちゃんに散歩に誘われる時いつもグズグズして行かなかったり、しぶしぶ付き合ったりしている。

 きのうも朝散歩に同行したのだが、しかし行ったら行ったで気持ちが良いものだ。

ももちゃんも笑顔でグングン歩いている。

山に入って山の匂いを嗅ぐと懐かしい気持ちになるし、ウグイスの「ホウ~~ホケキョ!」の鳴き声が山中に響いて、なかなか見られぬ姿を探すのも楽しい。また「チューチュルピー」と鳴く鳥はどんなだろう、と木の上を見上げてみたり。

わらびは生えていないかと下の方も探したり、しきりに楽しんでしまう。

 きのうは夕方の散歩にも誘われて、夕方は忙しいのに…とぶつぶつ言いながら、再び同行した。

みのちゃんは引きこもりのわたしを、外に出して運動をさせたいのだ、わかっている。

日曜日とあって、いつも行く健康公園は人が多く、ももちゃんが落ち着かなかった。

なので、隣にある静かな森林コースを散策することにした。

わたしは初めての場所だったので、また楽しくなってあちこちキョロキョロ見てまわった。

昭和天皇や香淳皇后が植樹したという黒松がドーンと幾本か立っていて、まわりの木々より伸びている。

見上げる程に歳月を感じた。

 機嫌よく歩いていると、急に「低血糖」になってしまった。空腹の夕方に時々起きる症状だ。

お昼に作ったお弁当が少なかったせいか、おやつを食べなかったからか。

手足に力が入らなくなり、汗が出る。バナナかオレンジジュースか、何か甘いものを摂取しなければ。

…ももちゃんの水しか持っていない。

そして山の中だ。

みのちゃんが「花の蜜を吸ったらいい」と言うので、椿の花をひとつもいでもらった。

椿の花の、花弁の底に蜜が溜まっているのを知っている。

「子どもの頃吸ったことがあるで!」と得意になって、花びらをちぎってみると黒く腐っていた。

気持ち悪くて「イヤー!」と道の下方にぶん投げた。

すると、ももちゃんが反応してそれを追いかけた。

みのちゃんがもう1個もいでくれた。ちぎる、黒い!「イヤー!」投げる、ももちゃん追う、を繰り返した。

椿の花はもう終わりなのだ。ボタボタ落ちてしまってるじゃないか。

 もうすぐ駐車場というところで「そっちは行きたくない」と、ももちゃんが寝ころんでごねる。

わたしも足に力が入らない。

みのちゃんが怒っている…。

わたしも、ももちゃんも、それはわかっている。

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