わたしが39歳の時に出会った本がある。
「富士日記」
文庫本にして分厚い「上」「中」「下」3冊の大作。
この本は、わたしのその後の人生に少なからず影響を与えているはずだ。
書いた人は「武田百合子」(1925-1993)。
肩書は「随筆家」となっているが、この「富士日記」を書いた時点では武田泰淳という作家の奥さんであり、専業主婦である。
つまり「富士日記」は、富士山の麓にある山小屋の別荘の暮らしを綴った主婦の12年間の日記である。
百合子さんが日記を書き始めたのが39歳で、読者のわたしも39歳で、当時本の中では同い年だったわけだから読むタイミングも良ければ、何かの小さな縁かもしれない。
実際は、わたしより39歳年上である(生きておられたら今97歳だが、67歳で亡くなった)。
百合子さんは専業主婦だけれども感性が魅力的なので、百合子さんの目を通した日常は、普通であってもおもしろく興味深い。
実際に会えば、さぞかし魅力的な女性なのだろうと思う。
飼っている犬の名前が「ポコ」で、うちのねこの名前も「ポコ」だという共通点もあった。
その犬の「ポコ」が死んだ時の日記を読んだ時、わたしは声を出しての号泣だった。
苦しくなるほどの描写と心情の表現は、わたしの胸をかきむしった。
本を読んで、わ~んわん泣くなんて滅多にあることではない。
百合子さんはねこも飼っていて、名前は「たま」。
写真がたくさん残っているが、ねこと一緒に写っている写真が多い。
わたしも、みのちゃんにこんな写真を撮って欲しいなあと思う。
武田百合子さんの本は全て持っているが、きのう本屋さんで「富士日記を読む」という関連本を見つけたのだ。
いろいろな人が百合子さんの魅力を語っていて、わたしの元にも百合子さんが再び降臨してきたみたいでドキドキしている。
ゆうべからずっと頭から離れず思いにふけってしまう。
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百合子さんが晩年、トマス・ハリスの二作を映画で観てから小説を読んだら、小説の方がはるかに素晴らしく、すごかった、と書いていた記述があったそうだ。
「羊たちの沈黙」と「レッドドラゴン」。
自分の親よりも年が離れているのに、共鳴できることがあったのがうれしい記述であった。
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