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えいこさんの中華鍋

本・映画

 わたしが子どもの頃、亡き母えいこさんは中華鍋でおかずをよく作っていた。

えいこさんは、毎日の料理に時折うんざりとした様子で台所に立ち、コンロ脇に引っ掛けている中華鍋を下ろす。

焼き飯や、焼きそばはもちろん、野菜炒め、すき焼き風の煮物、あらゆるおかずを、その中華鍋ひとつでこしらえ、家族に食べさせた。

(もちろん他のフライパンや鍋もあったけれども、中華鍋の出番が多かった。)

この夏の季節に、えいこさんがしょっちゅう作っていたのは、唐辛子をピリリと効かせた「茄子の甘辛炒め」。

しし唐を加えると、茄子の色に緑色が映えてきれい。

冷やしてもおいしいおかずで、えいこさんの味を思い出しながら、わたしは今もよく作る。

いなかの暮らしでは、近くにお店がないので畑で採れる野菜をメインにおかずを作ることになる。

野菜の煮物や炒めたの、ポテトサラダにきゅうりの酢の物…。

助手のわたしは、ジャガイモをつぶしたり、ネギや青しそを庭から摘んで来たりした。

畑でジャガイモを作っていたからか、えいこさんがダントツしょっちゅう作っていたのが「ジャガイモと玉ねぎの炒め煮」(本当は料理名などない)

これも中華鍋で作っていた、えいこさん。

この肉じゃがを貧相にしたおかずは…さすがに現在のわたしは肉を入れた「肉じゃが」を作るので、自分で作ったことはないのだけれど…。

 先日、みのちゃんに連れて行ってもらった古本市場で、わたしの好きなトラネコボンボンの本を見つけた。

料理本だけれど、中西なちおさんはイラストレーターでもあるので、絵本を見るような楽しさがあるのだ。ねこの絵もかわいいが、料理もアート。

四国高知の人という親近感もある。

「トラネコボンボンのお弁当」という本は持っていて、今回「トラネコボンボンの空想居酒屋」という本をゲットした。

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その中に、居酒屋なっちゃん(空想のお店)の「おにじゃが」というレシピがあった。

「おに」はオニオンのことで、作り方を見ると…なんとまあ!えいこさんの例のおかずではないか。

なちおさんも高知の人だし、おかあさんやおばあちゃんが作っていたおかずではないだろうか…と思いを馳せる。

また、「マカロニポテトサラダ」というレシピもあって。

これは田舎に葬式かなんかで帰省した時、近所のおばさんたちが作っていた。

わたしは、「マカロニサラダとポテトサラダを合体させるなんて!田舎の人は!」とびっくりしたけど、おいしくてそれから時々作るようになった。

田舎で馴染みのある「じゃこ天」や「焼き鯖」を使った料理のレシピも載っていた。

とにかく「トラネコボンボン」って名前が!なんともかわいいでしょ。

 わたしも、えいこさんの中華鍋で簡単な料理を作った記憶がある。

料理デビューはたぶん、いちばん簡単な「炒り玉子」。

熱した中華鍋に溶いた卵液(塩、砂糖の味付けはその時の気分で)をジュワ~っと入れてかき混ぜて、仕上げに醬油をかけまわして瞬時に出来上がるおかず。

玉子料理が好きなので、今でも定番のおかずになっている。

「わたしも中華鍋が欲しいな」と思うけど…。

わが家はIHなので底が丸い中華鍋は使えないのだった。

 

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