このところ、なんか寒くない?風も強いし…。今朝は雨で余計にひんやりと肌寒い。
そうは言っても5月はいちばん良い季節。朝の目覚めも良くて、日の出とともに5時~6時には起きる。怪獣ククちゃんがギャアギャアうるさいせいもある。
このふてぶてしい…憎たらしい顔よ。⤵
窓からコンビニやバス道を眺めるのが好きだ。目の前にあった会社建物が撤去され、視界が広がってから見えるようになった景色。
月曜日の朝。バス停に列ができている。少し高い位置のこちらからはバスの中の座席さえも見える。
「通勤…嫌だなぁ…」と思う。
わたしは徒歩5分の職場(パン屋さん)に通っていたので通勤の苦労はなかった。というか、通勤が嫌だから近くで働いていたと言ってもよい。通勤=ストレスだ。
学校卒業から結婚するまでの約3年間、バス・電車の通勤地獄を経験したが、よっぽどそれがわたしは嫌だったのだろう…。
そんな大阪梅田の画材屋さんでバイトしていた時。わたしは21歳か。
お店には10歳くらい年上の男の社員さんが5人程いて、マツモトさん、ナグチさん、イタタニさん、あと…名前忘れた…。30代の彼らは皆既婚者であった。なので(結婚願望が強かった)わたしから見ると憧れの「大人」の人達だった。サラリーマンの所帯じみた感もまるでないのだった。
画材屋さんに制服は無く、モスグリーンのエプロンを着用するだけ。でも、男の人はネクタイを着けるのが決まりだった。彼らは私服のダンガリーシャツやボタンダウンのシャツにネクタイをいい加減にゆるゆると締める。それが何ともわたしの目にはカッコよく見えたものだ。
ある日、その内のひとりが欠勤をした。イタタニさん。わりと休みがちな人で、周りは「またか」というような雰囲気だったと思う。
…次の日には出勤して来たイタタニさんとわたしは、店のカウンターに並んで立っていた。イタタニさんはおしゃれなフレームの眼鏡をかけている。5人の中で1番おしゃれかもしれない。
暇な時はおしゃべりができるくらいのんびりしたお店だった。画材などを買い求める人は限られているせいもあろう…。そして、イタタニさんは昨日休んだ理由をわたしに話した。静かにゆっくりとした口調で。
彼は奈良から通勤していて、「電車には乗った」と言う。そして「景色を眺めるうちに仕事に行きたくなくなくなってね」とニヤニヤ、ニコニコしながら言うのだ。そして、「電車の中から川を見ると鮎釣りしたくなったり、公園の芝生を見ると寝ころびたくなる…」「よくそういう気持になる」のだと言う。
わたしは年の離れた彼らをリスペクトしていたから、否定もせずに肯定的に受け止めた。イタタニさんが休んだところでバイトのわたしには影響は無かったし。
ある時またイタタニさんは、わたしに「見て、この靴。象の皮やねん」と自慢してきた。「ええ⁈象?」とわたし。
黒か、暗いグレーのローファーだった。ヒダとシワシワがいかにも象の皮膚だと思った。当時素足に革靴をはくのが流行りで、スニーカーソックスがまだなかった時代ね。「へええ~」とうらやましく見る。象の皮か…カッコいいなあ、と。
いつもニヤニヤニコニコしている人だった。今となっては「何ていい加減な奴だろう」と思う。
でも、あのカジュアルな5人の社員さんは、だからこそ画材屋さんに就職したのかもしれないな。スーツなんか着たくなかったのだろう。仕事よりプライベートが大事そうだったもの。だからわたしは好感を持ったのだと思う。
画材屋さんでバイトしていたわたしは、今思うと「好きな自分」だった。
しっぽをトリミングされたももちゃん。⤵ コッペパン。
身体が冷えるので、久しぶりに朝風呂に入ることにした。
ぎゅうぎゅうのバスや電車に運ばれる人の気持ちを考えながら…ゆったりとバスタブに浸かる。
…背徳感と幸福感。
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